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幹細胞研究のブレークスルー的発見(5月28日)
リューベック大学とフラウンホーファー生物医学研究所は、胚性幹細胞(ES細胞)並の分化能力を示す成体幹細胞を培養することに成功したと
発表した。当地メディアは、一様に画期的な成果と報じている。研究グループの中心人物であるクルーゼ博士によれば、人とラットの膵臓より得た幹細胞
に各種試験を施した結果、この細胞があらゆる組織に分化できる能力を有していることが確認できたとのこと。今後、マックスプランク協会、ドイツ研究協会、
連邦教育研究省が協力して、この研究結果を発展させていくこととしている。なお、一部有識者は、この研究成果の有効性は、今後の専門家による評価を
待ってから判断すべきと慎重な態度を取っている。
ドイツの頭脳流出は止まった?(5月21日)
ブルマーン連邦教育研究大臣は、研究者の流動性に関するいくつかのデータを示した上で、もはや独において頭脳流出は見られない旨述べた。提示された主なデータは以下のとおり。
・米国に留まるドイツ人研究者数は、90年代までの上昇から転じて減少の傾向にある。1998/1999学期において、米国内の外国人研究者数768百人のうちドイツ人は52百人であったが、
2001/2002学期は外国人研究者数860百人中ドイツ人が50百人であった。
・2000年の統計によれば、海外で学生生活を送るドイツ人50千人に対しドイツ国内の外国人学生数は113千人。また、外国人学生数は増加傾向にある。
・マックスプランク協会は世界の先導的研究者の獲得に成功している。本年2月時点で、278の研究部長職のうち75が外国人。また、41人のドイツ人部長が海外からの帰国組。
・ドイツ研究教会のグラントを得て海外へ行った研究者のうち85%がドイツに戻っている。
・新たに導入したジュニアプロフェッサー職のうち14%「が外国人もしくは海外から帰国したドイツ人。
ドイツの幹細胞研究に関する将来予測調査公表(5月17日)
マックスデルブリュッケセンター及びユーリッヒ研究センターは、連邦教育研究省の委託を受けて実施した「ドイツにおける幹細胞研究の将来」
と題する予測調査を公表した。同調査は、研究関係者、病院関係者、産業界の専門家に対し各種質問をし、その回答をデルファイ手法を用いて
解析したもの。主な結果は以下のとおり。
・胚性幹細胞に係るドイツ国内における厳しい規制のため、調査に参加した半数の専門家が、今後5年のうちにドイツの幹細胞研究者の半数以上が
国外に移動すると考えている。
・70%の専門家が、成体幹細胞の研究においてドイツの世界における先導的な役割を期待している一方、4分の3以上の専門家が、実際にそのような先導的役割を担うことはないと考えている。
・今後11〜20年のうちに幹細胞に関する基本的事項の多くが解明され、医療への応用研究が中心となる。
・今後10年以内に各種成体幹細胞を効果的に得、蓄積することができるようになる。
・幹細胞を用いた最初の治療は、今後6〜10年に心臓疾患及び糖尿病に対し行われる。
・人胚性幹細胞を脳に移植することによるパーキンソン病の治療は今後6〜10年に行われる。
・多硬化症、横断麻痺の治療は、今後11〜15年に行われる。
・アルツハイマー病の治療は、今後11〜20年で可能となる。
E&Y社の「ドイツ・バイオテクノロジー報告」公表(5月12日)
エルンスト&ヤング社は、連邦教育研究省の委託により毎年実施しているドイツのバイオテクノロジーの現状調査
の報告書「第5次ドイツバイオテクノロジー報告2004」を公表した。ブルマーン連邦教育大臣は、同報告書を受け、
独のバイオテクノロジーの見通しは明るく、特に創薬の面で力強さを増している旨述べた。同大臣はまた、
ベンチャーキャピタルが対前年比で増加していること、ハイテクマスタープラン等によるベンチャー・中小企業支援策の実施、
連邦政府がライフサイエンスに年間7億ユーロ以上の投資をしていることに言及し、独は今後も世界でも有数の競争力を維持
するだろうと評した。また、同報告書によれば、ベンチャー・中小企業の成果が着実に市場に出てきつつあること、
一時は半数が倒産するであろうと予測されていたドイツのバイオ系中小・ベンチャー企業の倒産が、2003年は10%未満に留まる一方、
23の新規起業があったため、全体の企業数は3%の減に留まったことなどを報告している。
全国ゲノム研究ネット第2フェーズへ(5月11日)
カーテンフーゼン連邦教育研究省事務次官は、ゲノム研究の成果の疾病克服への応用を目指し、全国の主要研究機関を
ネットワーク化し研究を進める「全国ゲノム研究ネット」の第2フェーズとして、今後3年間に135百万ユーロを投じる旨発表した。
同ネットワークは、2001年より3年間の予定で進められていたが、成果が上がっていることと、疾病克服のためには同ネットワーク
におけるさらなる研究が必要との判断により第2フェーズに移行することとなった。本プログラムにおける重点分野は、
心臓循環系疾病、がん、感染症、炎症、環境要因疾病、神経系疾病とされている。
旧東独の新たなイノベーション・ネットワーク(5月11日)
連邦教育研究省は、旧東独のイノベーション促進プログラムのもと、新たに3地域に研究開発クラスターが形成される旨発表した。
ルドルシュタットの”ALCERU-HIGHTECH”は、セルロース系材料を用いた開発・研究を行うもので、連邦教育研究省は、
参画する大学や公的研究機関に、今後3年間に190万ユーロを助成する。そのた、湿式コーティングに係る研究開発に取り組む
ビターフェルド−ヴォルフェンのクラスター計画、ライフ系研究開発を行うゼンフテンベルクのクラスター計画が、6月初めに承認される
見込み。これらを含め、2001年以降形成されてきたクラスターは13となる。
EADS社アリアン5方ロケット30基受注(5月10日)
ベルリンで開催中の国際航空宇宙展示会の場で、アリアンスペース社とEADS社の間で、アリアン5型ロケット30基の製造契約が結ばれた。
契約調印は、シュレーダー首相、仏ドベール研究大臣立ち会いの下行われ、本契約を核として、欧州の宇宙開発及び宇宙産業を立て直したいという
欧州の決意を示すものとなった。本契約は、2005年から2010年までの間に、EADS社がアリアン5型増強型(ECA)、自動往還機打ち上げのための
アリアン5ESの製造を含む30基のアリアン5型ロケットを製造するというものであり、契約額は約30億ユーロとされている。
ドイツ連邦研究報告2004発表(5月5日)
ドイツ連邦研究報告2004が閣議決定を経て公表された。これによれば、2002年の独のハイテク貿易利益額は1320億ユーロ、ドイツの研究関連機器の市場に占める割合は
14.9%と、ドイツ製品は強い競争力を保持している。また、主要科学誌における独発の論文が占める割合は9%(米国の32%、日本の10%に次ぎ3位)、人口百万人当たりの特許数は127
(日本の164に次ぎ2位)と、こちらも独の強さを示している。その他、旧東独地域への投資が進んでいること、重点分野への研究開発投資が進んでいること等が報告されている。
なお、本報告書は連邦教育研究省ホームページよりダウンロード可--->こちら。
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