CERNにおけるドイツの博士課程在籍者向け支援プログラムの発表について(10月29日)
29日、連邦教育・研究省は、欧州原子核研究機構(CERN)におけるラージ・ハドロン・コライダー(LHC)の運転開始が来年に迫っていること及びこれに関連して、CERNにおけるドイツの博士課程在籍者に対する新しい支援プログラムを発表した。
CERNの約6億5千万ユーロ(2007年)の予算のうち約20%がドイツから支出されており、世界的な高性能の素粒子加速器であるラージ・ハドロン・コライダー(LHC)は来年の夏に最初の実験がスタートとなる。
このスタートにあたり、連邦教育・研究省は、ウォルフガング−ジェントナー奨学金(Wolfgang- Gentner- Stipendien)プログラム創設した。これは、応用物理と技術に関するドクトラント向けのものである。ドクトラントは、学位論文を取得するためにCERNにおいて最大3年間の研究に対して奨学金を受給できる。
薬学イニシアティブの新しい内容を発表(10月26日)
26日、連邦教育・研究省は、薬学イニシアティブにおいてバイオテクノロジーにおける革新的な分離処理の為に今後3年間に最大1000万ユーロを投資するという計画を新たに発表した。
薬品開発のようなバイオテクノロジー製品の製造における高品質を保障するためには、製品の浄化は決定的なものである。例えば、遠心分離機や結晶化など、機械的または、熱的な浄化技術が使用されている。
バイオテクノロジーを利用した製造過程の効率性は、昨年明らかに向上した。ネックは、製造過程の最後である製品の浄化にある。そのための新しい手法を開発することは、ここ数年ずっとその緊急性を増してきている。浄化はバイオ医薬における大きなコスト要因であるので、新しくそして安価な浄化技術は結局患者のためにもなる。
新しい連邦教育研究省の支援策は夏に発表された薬学イニシアティブの一環である。このイニシアティブには、総額8億ユーロが2011年までに充てられることとなっている。薬学イニシアティブは、保健研究とバイオテクノロジーを結びつけ、薬の研究開発におけるイノベーション過程に存在する溝を埋めるのに役立つ。
ハイテク戦略:最初のプログレスレポートの発表(10月24日)
24日、連邦教育・研究省は、昨年発表したハイテク戦略について最初のプログレスレポートを発表した。連邦教育・研究省のホームページによれば、
変革の初年度においては、研究とイノベーションを推進するための数多くの政策イニシアティブが開始された。それらは、例えばクラスターコンペティション、中小企業の研究支援のための特別の措置や、知的財産権の保護の改善である。経営トップに対するアンケートによれば、ほとんど80%の人がドイツにおけるイノベーション環境を肯定的に評価している。2004年には、彼らは、環境はむしろ悪いと評価していた。
連邦政府は引き続き、研究開発にGDPの3%を支出することを目標としている。任期が終わるまでに研究とイノベーションのために約65億ユーロが追加的に投資される。2006年から研究開発における民間投資も増加している。企業の経営政策において研究とイノベーションは、重要性を増してきており、企業は持続的に改善されたイノベーション環境によって利益を得ている。優秀な労働力の必要性も高まってきている。
ハイテク戦略は、ドイツが伝統的に強い分野だけでなく、光起電力、ホワイトバイオテクノロジーやより正確な医療診断技術や知的なエネルギーの開発のような新しい応用分野においても、ドイツ企業が技術市場において将来的に成功する途を拓くものである。ドイツにおけるリーディング市場を拓くために、企業と科学は戦略的なパートナーシップの中で手に手をとって協力する。来年においても、ハイテク戦略はさらに推し進められるであろう。とある。
ゲルハルト・エルトゥル(Gerhard Ertl)教授がノーベル化学賞を受賞。(10月10日)
ドイツ・ベルリンの研究者ゲルハルト・エルトゥル教授がノーベル化学賞を受賞した。物理学者ペーター・グリュンベルク氏の受賞に続き、今年における2番目のドイツ人のノーベル賞受賞者となった。
この研究は、化学産業にとって非常に重要なもので、鉄の錆、燃料電池の製造法や車の触媒の理解が進んだ。表面化学触媒は人工肥料の製造等多くの産業で重要なものであり、表面化学によってオゾン層の破壊も説明できる。
独物理学者ペーター・グリュンベルク(Peter GRUENBERG)教授がノーベル物理学賞を受賞。(10月9日)
本年のノーベル物理学賞は、独ユーリッヒにあるヘルムホルツ固体物理研究所の物性物理学者グリュンベルク教授及び仏物理学者のアルベール・フェール教授が受賞することになった。彼らは、1988年、巨大磁気抵抗効果(GMR)を別々に発見した。この技術は、今日ほぼ全てのコンピューター・ハードディスクに応用されている。
この基礎研究の成果により、今日、何10億ユーロ規模の市場が生まれており、今日のハードディスクのメモリー容量や出力性能は、両物理学者の発見したGMRなしに実現し得ないものである。当該技術の応用により、ハードディスクからデータを読み出す技術が飛躍的に進化しており、ノーベル賞委員会は、「(GMRの)開発は、将来性のあるナノテクの応用の最初の例の一つである」ことを受賞の理由として挙げている。
グリュンベルク教授は、1939年にピルゼン(チェコ)で生まれ、ダルムシュタット(独ヘッセン州)で博士号を取得した後、カナダで3年間研究を行い、1972年からユーリッヒ固体物理研究所の研究者となり、定年後も同研究所において研究を継続している。同教授は、これまでの功績に対する数多くの国際的な賞を受賞している。1998年は「独連邦大統領ドイツ科学賞」、2006年は「EU発明家大賞」を受賞した他、2007年には「シュテルン=ゲルラッハ・メダル」、「イスラエル・ウルフ賞」、さらに「日本国際賞」を「基礎研究が発信する革新的デバイス」分野で受賞し、賞金30万ユーロが贈られた。
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