○研究機関の自由裁量権5項目を閣議決定(7月30日)
7月30日、シャヴァン大臣のイニシアティブによる「科学自由法」イニシアティブの枠組みの中で研究機関の独立拡大に関する5項目を閣議が決定した。これによりドイツの研究機関は将来、1)予算、2)人事、3)ネットワーク化、4)建設、5)調達の5項目で大幅な自由裁量権を掌中にすることになる。
「これはドイツにおける研究の自律性拡大の里程標ともいうべきものであり、ドイツの研究全般は国際競争においてより魅力的、有能なものとなり、より大きな自由裁量の余地を与えられることになる」と大臣は語った。
2007年8月連邦政府は「科学自由法」へのイニシアティブで合意しおり、今回の5項目はこのイニシアティブ実現への第一歩である。
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○がんの早期発見のためハイデルベルクにハイテク機器が完成(連邦教育研究省発表:7月18日)
シャヴァーン大臣は金曜日ハイデルベルクのドイツがん研究センター(DKFZ)の高性能トモグラフの竣工式で、「我々の目標は医学の新しい質である。これにより患者により優しい、早期の診断とより効果的な処置が可能となる」と語った。
この7テスラの磁気共鳴トモグラフは世界最高級の性能である。新しい高解像技術により患者が疾病に典型的な症状を見せるはるか以前に癌細胞の生成に関するシャープな画像とより深い観察が可能となる。高磁場のためDKFZには特別に新トモグラフ用の建屋を建造、BMBFはこのため約400万ユーロを投入した。
なおBMBFは今後数年間にDKFZの建屋整備の費用約7000万ユーロを負担していく予定。
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○「幹細胞研究における指標となる成功」とのFrankfurter Allgemeine紙(1面及び4面)の発表。(7月10日)
見出し「幹細胞研究における指標となる成功」
ミュンスターの研究者ハンス・シェーラー氏が遺伝子への干渉なしのリプログラミングに成功。
幹細胞研究は、最近、画期的な成功を目前にしている。倫理的かつ政治的に異論のある胚性幹細胞と同等に器官や組織の代用となる可能性を有する新しい生体固有の細胞を製造するための大きな進歩がミュンスターのマックスプランクバイオ医学研究所ハンス・シェーラー氏の研究室であった。
それは、製造が行われ、培養シャーレの中でリプログラミングが行われた胚性幹細胞である。「gPS(Germline derived pluripotent stem cells):万能幹細胞から得られた遺伝子ライン」である。ドレスデンの第2回国際幹細胞・組形成会議の最終日にシェーラー氏がその製造の簡単さと安全性において今までの人工プログラム細胞より優れているという幹細胞の最新の研究の成功について発表した。
シェーラー氏によれば、新しいgPS細胞は、完全な遺伝子の干渉がない代わりに、もちろんまだマウスでの段階であるが、初めてウイルスなしに成人の体細胞を万能幹細胞に変換するものである。新しい胚性幹細胞は、まずは実験室での培養を通して発生したもので、かつ個々の細胞に形成され、特別に多くの種に成長するということが証明されたものである。人工的な再プログラミングは、100例に2例しか成功しないというようにとても難しい技術である。個々の活動化と沈静化を行うことを遺伝子が行うことで、シェーラー氏は、gPS細胞には、日本の山中伸弥氏による2年前のiPS細胞と同様な胚性幹細胞の明確な万能性を説明した。
ボン大学の「生命及び脳センター」において、ミュンスターの胚性幹細胞はすでに培養シャーレで心臓の筋肉細胞やいくつかの神経細胞の能力を備えるまでに培養されている。この技術は、人工の細胞や組織移植のためにあまり老化しない「原料」を提供できるので、シェーラー氏は、この胚性幹細胞に大きな期待をよせている。
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○ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムの年次会合のベルリン開催に関する連邦教育研究省のプレス発表。(7月7日)
「我々は、生命科学の国際化を強化する。」
「ドイツは、ライフサイエンスにおける国際的協力を支援するための世界的に見て他に例を見ないかつ多くの国家が共同して資金を提供するプログラムから極めて大きな利益を享受している。」と連邦教育研究省のトーマス・ラケル政務次官が、ベルリンで7月6日から9日まで開催されているヒューマンフロンティアサイエンスプログラム(HFSP)の年次会合に際して述べた。「HFSPを通して、優秀な科学者が世界の最も優れた研究室の同僚とともに共同研究を行うことができる。プログラム創設以来、18年間で世界中から5000人もの科学者が支援されてきた。そのうちドイツからは、600人である。厳正な学術的選定基準を考慮すれば、このことは、ドイツのライフサイエンスに対する激励と栄誉である。」とラケル氏は、月曜日ベルリンで語った。「我々は、奨学生の受け入れ国としてより魅力的でありたく、また世界中の最も優秀な研究者を惹きつけたい。」ドイツは、これまでに連邦教育研究省から約3千万ユーロをこの国際的財政的プログラムに拠出している。2012年までに連邦教育研究省は、さらに1千4百万ユーロを拠出する予定である。
HFSPの年次会合は、今回初めてドイツで開催される。25カ国以上から約300人の参加者が、研究プロジェクトの最新の状況について意見を交換する。HFSPの事務総長は、この8年間、神経科学とノーベル医学賞受賞者のトルステン・ビーゼル氏である。ベルリンで、彼は彼の後継者を紹介することになる。2009年から、長年ドイツ研究協会の会長であり、ヨーロッパ研究協会の事務総長であった、アーネスト=ルードリッヒ・ヴィネッカー氏が、事務総長の職を引き継ぐ。その指名に対し、ラケル氏は、「HFSPがとても経験豊富なドイツの学術マネージャーを事務総長して任命したことは、ドイツにとりとても名誉なことである。」と述べた。
HFSPは、1987年のベネチアの先進国サミットにおける日本の提案により始まった。1989年の創設以来、60カ国以上から5000人以上の科学者がHFSPに参加した。2300人の個人奨学者及び760の研究グループ併せて3000弱の参加した研究者が支援されてきた。現存する生命体の複雑なメカニズムの解明のための基礎研究のプロジェクトが支援された。その財政は、日本、アメリカ合衆国、ドイツ、イギリス、イタリア、カナダ、フランス、EU、スイス、オーストラリア、ニュージーランド、インド、韓国と最も新しい参加国のノルウェーの共同で支えられている。1989年から2008年末までに約5億5千万ユーロが活用できる予算として与えられている。
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○連邦教育研究省2009年度予算案を発表(7月2日)
「教育研究に対する支出は、8%増加。」
政府は、教育研究への支出を昨年より著しく増やした。2009年の連邦教育研究省の予算は、総額100.8億ユーロとなる。これは、前年より、7億3千万ユーロ(約8%)の増加である。現政権の任期中に連邦教育研究省の予算は、2005年に対して25億ユーロ増加した。これは33%の増加である。
現政権発足時に、研究開発とドイツのハイテク戦略に対して60億ユーロのプログラムを政府はすでに決定していた。また、2008年においても研究開発への支出は著しく増加している。さらに2009年の連邦教育研究省の予算とそれ以降において、これまでの財政計画から、さらに追加的に毎年3億ユーロが研究開発に使われる。これにより、2009年には、研究開発投資の対GDP比が2.8%になり、2010年に研究開発投資の対GDP比を3%にするリスボン戦略の目標達成への重要なステップになる。
増加した予算は、以下の分野に投入される。
・高齢化社会の研究と健康研究
・「中小企業イニシアティブ」による中小企業における研究開発資本の増強
・環境・エネルギー研究
・国際的な共同研究
これらの連邦教育研究省のプロジェクト支援については、2008年に対して15.2%増加の35億ユーロとなった。
研究とイノベーションの分野において、政府は、構造的な近代化のための努力とドイツの研究環境の国際的競争力の強化を継続していく。神経退化の病気のためのドイツセンターの建設や学術の国家アカデミーの活動開始がある。大規模な研究組織の支援として2009年には、総額37億ユーロが用意される。
連邦奨学法奨学金(BAfoeg)については、支給額の増額と受給者の増加により、1億3千6百万ユーロ増の14億ユーロ以上に増加した。5千億ユーロの追加資金により、「マイスター」奨学金や職業教育後のキャリアアップ奨学金の支給が2009年には可能になる。これらの奨学金は、才能ある職業教育の修了者に、大学での学修を開始し、これによって能力をさらに高めようとすることを促すものである。
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