○ ベルンシュタイン賞の授与(9月30日)
9月30日、フランクフルトにおける「ベルンシュタイン会議2009」に際しラッヘルBMBF政務次官はヤン・グレシャー博士に125万ユーロの賞金を伴うベルンシュタイン賞を授与し、「国際公募によるベルンシュタイン賞によって我々は傑出した若年科学者を対象として科学的なキャリヤーのための最高の基本条件を整え、同時に研究拠点ドイツのためにそうした人材を獲得していく」と語った。同会議は「National Bernstein Networks Computational Neuroscience」の年次大会であり、BMBFはこの国際公募による賞によって毎年この分野における優れた後継科学者を顕彰している。
我々はどのようにして決定を行うのか。様々な神経科学的な調査の結果、脳はどのように、どこで選択肢を比較するのか、その基本的な部分は知られている。しかしながら決定には多くの要素が役割を果たしており、これまでのモデルでは十分にこれが考慮されていない。グレシャー博士は賞金によってこの要素について研究する。同氏は現在カリフォルニア工科大学に勤務する科学者であり、BMBFは、これによって同氏をドイツへ帰還させ、同氏はハンブルク・エッペンドルフ大学病院で独自の研究グループを立ち上げることになる。
次官は「デシジョン・メーキングをより理解することは、長期的にみて、精神疾病における治療改善に繋がる」と語った。抑うつ症或いは脅迫障害においてはデシジョン・ビヘビアが阻害されている。グレシャー博士の説明によれば「評価プロセスにどのようにして影響をあたえることができるかを正確に知ることができれば、より集中的な治療に繋げることができる」とのことである。
○ ケルン専門大学の研究者が人工肺を開発(9月30日)
急な肺機能障害の患者は緊急に、例えば酸素を血液中に送り込むなどの技術的な呼吸支援が必要となる。こうした人工呼吸システムはその大きさ及び重量から現在では殆どが固定型のものとなっている。ケルン専門大学の研究者はこのためILIAS(肺の損傷を有する人の集中移送のための移動型人工肺)の研究に取り組んでいる。この研究プロジェクトの目標は人工肺の性能をテストし、継続運転における負荷能力を最適化することにある。この計画はノルトライン=ヴェストファーレン州のイノベーション省によって今後二年間に112,500ユーロの助成を受ける。ケルン専門大学はボフムのILIAS-medical
GmbHによって支援される。同計画は研究公募制度「Transfer.NRW: FH-EXTRA」によって選ばれたものの一つである。
○ ヨーロッパ自由電子レントゲンレーザー(XFEL)の建設及び運営に関する参加国間の協定が確定について(9月23日)
ヨーロッパにおける1つの中心的なプロジェクトが大きな一歩を進めた。ヨーロッパ自由電子レントゲンレーザー「ヨーロッパXFEL」の建設と運営に関する国際的合意の交渉が水曜日(23日)、ベルリンにおいて成功裏に終了した。13のXFELパートナー国の代表者が、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロシア語、スペイン語の6カ国語で記された協定に署名した。
ヨーロッパXFELは、ハンブルク州とシュレスヴィッヒ=ホルシュタイン州にまたがって建設され、2014年に開設される。これにより、これまでにない輝き、強さ及び解像度を持ったレントゲンレーザーがもたらされ、微細構造、超高速過程や通常でない物質状態の観察等の新しい実験が可能になる。
外務省も参加した会議は長年に亘る協議を終了した。2003年には、XFELは、国際的プロジェクトとして実現されるべきという独教育研究省の提案があった。レントゲンレーザーは、最初に学術審議会(Wissenschaftrat)の推薦があったものである。
XFEL協定の大臣による署名は12月初めに予定されている。工事は、すでに1月から始まっており、計画通りに進行している。13のパートナー国(デンマーク、独、仏、ギリシャ、英、伊、ポーランド、露、スウェーデン、スイス、スロバキア共和国、スペイン、ハンガリー)が共同でレントゲンレーザーを建設する。参加のためのドアは、興味を持つ国々に広く開かれており、特に中国が参加を計画している。建設と運転の開始の為の費用は、約10億ユーロであり、半分以上をドイツが負担する。重要な国際的なパートナーは、2億5千万ユーロを拠出するロシアである。
○ ドイツとアメリカが共同で再生医療を強化(9月17日)
再生医療における独米協力があらたに強力なインパクトを得ることになった。マイヤー=クラーマーBMBF次官は木曜日CIRM(Californian Insitute of Regenerative Medicine)を訪問し、覚書に調印した。覚書はBMBF及びCIRMが再生医療の領域における研究助成において協力を密にすることを取り決めている。取り決めの中心となっているのは、国際的な学界、民間等の合同研究プロジェクトを共同で助成することである。2009年中にも初の合同パイロット措置を開始させ、また更なる合同イニシアティブを再生医療の様々な領域で今後数年にわたり計画している。
連邦政府の国際化戦略をドイツとカリフォルニアの先端研究機関の集中的な協力により再生医療の分野でも実現し、アメリカとのライフサイエンスでの協力を一層強化するのがその目標である。
これによって自己免疫疾患、脊柱疾患、がん、心臓発作、脳卒中等の予防に関する新しい処置を開発するための世界最高の研究チームを結成し、国の枠を超えた協力によってこれを助成していく。CIRMは同様の協定を既にオーストリア、英国、日本、カナダ、スペインとも締結。ドイツ側はベルリン・ブランデンブルク再生治療センター、その他の研究所が参加する。
○ ドイツ研究振興協会の助成ランキングの発表(9月10日)
ドイツの大学は科学、研究における国内、国際競争に対する態勢を着々として整えつつある。大学の多くは過去数年その研究プロフィールをシャープなのもとし、専門的な重点を明確に設定している。以上が木曜日ベルリンで発表された最新のDFG助成ランキングの要点。この200ページ以上に及ぶ広範な報告書は幅広いデータベースに基づき、詳細な分析によって、過去ドイツの大学は色々な資金源からどの位の助成金を得ているかを明らかにし、その利用に関しても明確にしている。尚、今回初めてのことであるが、大学外研究機関に関しても詳細に取り上げている。
「助成ランキング2009」は今回で5度目の調査である。中心となるのは、DFGが承認した20億ユーロ強の研究助成である。更に連邦各省、その他の助成機関、EU、2007年設立の「European Reserch Council」等の助成データについても取り上げている。これによって同報告書は取得された第三者資金(third party funds)のほぼ90%を包括することになる。
クライナーDFG会長は「今回の調査は、大学がより厳しい競争によってもたらされるチャンスというものを認識していることを明らかにしている。この競争における本当の原動力となっているのがDFG及びその他の資金源による助成金である」と強調した。助成金、競争、プロフィール形成は色々な形で相互に関係している。大学はその研究プロフィールをシャープなものとするため、得られた第三者資金を益々強力に利用している。それは更なる第三者資金獲得競争におけるチャンスを拡大することにも繋がる。
プロフィール形成の先鋭化によって多くの面で成果がもたらされている。ドイツの大学及び研究機関はEUの第六次研究基本計画の枠組みの中で最多の第三者資金を獲得することができた。ドイツの研究機関に承認された金額は30億2400万ユーロに上り、これは第6次研究基本計画助成金総額の18%に当たる。
厳しい競争は承認額の最も多い大学のランキング・リストからも認めることができる。ドイツの承認額の最も多い20大学がDFG資金全体の60%を獲得しており、上位40大学が88%の割合を占めている。リストのトップにあるのはアーヘン工科大学で、ミュンヘン大学に取って代わっている。ミュンヘン大学はDFGから第三者資金2億4900万ユーロを得ているが、第二位となっている。これに大きく差をつけられ、ヘイデルルベルク大学(2億1540万ユーロ)、ミュンヘン工科大学(2億40万ユーロ)等が続いている。
これら様々な、数多くの結果によって「DFG助成ランキング2009」はこれまでで最も総括的な概観、更にはドイツの大学における研究重点及び第3者資金の分配に関する詳細な分析を行ったもので、他の数多くのランキングとは明らかに違ったものとなっている。
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独教育研究省による動物疾病防止に関する研究の推進について(9月4日)
人から人への伝染するウイルスの直接的な伝染と並び、動物の病原体の更なる蔓延、そして人間への伝染の危険がグローバル化、更には気候変動によって深刻化している。鳥インフレエンザが家畜へ伝染し、更には人間への伝染の可能性といったことは記憶に新しい。
9月4日シャヴァーン大臣は「家畜の伝染病による経済的影響、人への伝染性への危惧からして、動物疫病防止に関する国際レベルでの集中的かつ強力な研究が如何に重要であるかが明確である」と語った。このため独教育研究省は15のパートナー諸国とともに動物疾病防止に関する研究攻勢をスタートさせる。これに投入される資金は2000万ユーロ、うちドイツは400万ユーロを負担する。
この研究攻勢は、欧州の研究プロジェクトの枠組みの中で家畜の伝染病の有効な監視方法、病原体の持ち込み防護措置、動物への新しいワクチン、抗生物質代替薬品等を開発するものである。
なお、これに関しては新しい欧州のネットワークEMIDA(European Research on Emerging and Major Infectious Diseases of
Animals)が国際的な分業の利点を図っていく。目標は、欧州の参加研究パートナーの技術的、科学的なコンペテンスをネットワーク化し、結束させること。動物疾病防止においてドイツの研究者はそのコンペテンスを国際プロジェクトの中に組み入れ、共同で他の欧州パートナーのノウハウへアプローチすることができる。
関心のある研究者は11月中ごろまでにそのプロジェクト・アイディアを提出することができる。この助成イニシアティブは欧州委員会によって支援される。
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独教育研究省と米国NSF間のニューロサイエンスに関する新しい助成イニシアティブについて(9月3日)
BMBFとNSF(National Science Founation,USA)間でニューロサイエンスの重要分野における新しい助成イニシアティブが行われることになり、シャヴァン大臣は、「我々はアメリカとの将来より密接な科学協力に向け正しい方向付を行った」と語った。
脳の機能は、まだ完全に解明されていない問題である。これに答えを見出そうとするのが、コンピューター・ニューロサイエンスの研究分野である。そこでは脳の働きが実験による研究と並び、コンピューター・モデルでシミュレートされる。「そこで得られたイノベーションは、そのためになされたどのような努力をも価値あるものとするのです。例えばこれによって神経のインパルスに反応し、これを装着する人が「感ずる」ことの出来る義肢を開発することが可能となるのです」と大臣は強調した。
この専門分野は融合的なアプローチを必要とするものであり、様々な専門分野の科学者たちの協力が必要である。また国際的な研究構造も深化されなければならない。ドイツとアメリカはコンピューター・ニューロサイエンスの分野では指導的な役割を果たしている。大臣は「それ故両国の協力を改善することが非常に重要です。このことは研究協力助成のプロセスを構造的に強化することによってのみ可能となるのです」と語った。今回の助成イニシアティブの調印をベースに両国は2010年以降ドイツ・アメリカ研究プロジェクトを助成していく。
シャヴァン大臣は「ドイツは国際的な先端分野において他国に伍して活動している」と語った。これはBMBFの強力な財政的な振興策による成果である。例えば「ベルンシュタイン・コンピューター・ニューロサイエンス・ネットワーク」に対し1億ユーロ強の資金助成をしている。これはBMBFが様々な助成措置を講じ、制度化したものである。
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