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●ドイツ研究協会(DFG, www.dfg.de)のグラント
(1)組織の概略
何といってもドイツの代表的グラント配分機関はDFGです。
DFGは、1951年設立の非営利公益団体であり、その予算の殆どは連邦および州政府
から拠出されています。その額は、ドイツにおける公的研究開発費の約25%に相当し、
一組織が受け取る研究開発費としてはドイツ最大です(2001年度予算は約12億ユーロ)。
予算の3%が事務局運営に充てられており、残りは全て研究助成に充当されています。
フェローシップを含め、年間2万5千件前後の研究プログラムが支援されており、助成金の
9割前後は大学等高等教育機関に配分されています。
なお、グラント助成対象者は、ドイツ国籍所有者もしくは研究活動の恒常的な場がドイツ
国内に在る者とされています。
(2)主な助成プログラム
ここでは、主な助成プログラムを紹介しますが、この他にも様々なプログラムがありますので、
DFGのホームページをご覧になることをお勧めします。英語によるプログラムの説明もあります。
○一般研究助成(Normalverfahren)
DFG予算の40%前後が配分される中心的プログラム。
博士課程レベルを修了したあらゆる研究者が、全ての研究領域において、本人が立案する
研究計画により、随時申請可能。グラントは研究に係る直接経費(人件費を含む)のみに
支給され、研究代表者の給与や研究機関のオーバーヘッド等は助成されない。なお、2001年
のデータでは、グラントの78%がポスドク等若手研究者の人件費に費やされており、間接的
ながら重要な若手支援の役割を果たしている。
○重点研究助成(Schwerpunktprogramme)
DFGが設定するテーマないしプロジェクトについて公募を行う。重点分野に関し、研究者
が組織の枠を超えた協力により研究を実施するという点に主眼が置かれている。海外の対応機関
との協力も可。2001年度には、157の重点研究プログラムにおいて1,678件の
個別研究に対し助成された。
1つのプロジェクトにつき、最大30件の個別研究を助成。助成期間は6年。
○特別研究領域助成(Sonderforschungsbereiche)
各大学の研究および設備面での特長を活かしつつ、複数の大学が相互補完的に協力することで、
学際的研究を進めるセンター・オブ・エクセレンスの形成を狙った制度。
申請は大学が行い、選定される研究分野は学際的であることが求められる。なお、大学以外の
研究機関も、協力機関として参加することが出来る。助成期間は最大12年。
○若手研究者支援のためのプログラム
・研究奨励金(Forschungsstipendien)
博士号取得者(年齢制限なし)を対象に、研究奨励金(月1500ユーロ程度)、配偶者手当、
児童扶養手当などを支給。
助成期間は2年間(1年間の延長可)
・ハイゼンベルク・プログラム(Heisenberg-Programm)
ハビリタチオン(大学教授資格)取得者またはそれと同等の者で、原則35歳以下(例外として
40歳まで可)の特に優れた研究者に対し助成。外国籍所有者の場合は、将来ドイツにおいて研究
活動を行う意志のある者に限り申請可。
研究奨励金(月3400ユーロ程度)、配偶者手当、児童扶養手当などを支給。賞与も年1回あり。
・エミィ・ヌーター・プログラム(Emmy Noether-Programm)
博士号取得直後の若手研究者を対象に、研究面での自立を促すプログラム。プログラムは2段階
からなり、第1段階(2年間)で国外における研究活動を、第2段階(4年間)で国内における
研究活動を支援(第2段階に移行する際に審査あり)。申請条件に、国際的学術誌への論文掲載
もしくは同等の出版実績が求められる。外国籍所有者の場合は、研究活動の場がドイツ国内にある
者に限られる。
研究奨励金(月1500ユーロ程度)、配偶者手当、児童扶養手当などが支給される。
(3)審査
審査は、基本的にピア・レビュー(同じ研究分野の研究者がレビューしあう方法。欧米では一般的。)
を経て行われる。審査手順は事業により異なるものの、基本的に個別分野の専門委員会による審査を経て、
中央委員会にて最終決定される。2002年7月現在で、650人の研究者が189の専門分野に別れた
37の専門委員会で審査を行っている。
研究者からは、概して非常に公正な審査がなされているとの評価を得ている。
*上記DFGに関する情報の大部分は、学術月報2002年9月号記事「ドイツ研究協会(DFG)の概要(日本学術振興会 萩尾 生 氏執筆)」
を転用させていただきました。
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