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21.7.2003

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ドイツの研究環境


 ドイツは、研究者ではない私(Web管理人)が言うのも何ですが、こと研究に関しては非常に恵まれた環境にあると思います。

 特にマックスプランク研究所やフラウンホーファー研究所などの大学外の公的研究機関は、施設・設備ともに非常に良く整っており、研究室にもよりますが、学会出席等のための旅費(もちろん海外出張もあり)にも不自由しないことが多いようです。また、テクニシャンや研究補助員の数も豊富で、研究者自らが試料の調整やビーカー洗い等をすることも希でしょう。

 大学は、大学や研究室により随分状況が違うため一概には言えませんが、良い研究室を選べば非常によい環境が整えられています。大学の研究者は、よくマックスプランクにいる研究者のことを、「あなたは天国にいるからね。」などど揶揄していますが、私の感じから言えば、マックスプランクにもひけを足らない研究室は思ったよりも多いです。また、ドイツは土地がタダみたいなもので広大な敷地を容易に確保できるため、施設・設備はともかく、確実に日本より広い研究スペースを得ることが出来るでしょう。

 ドイツの大学は、以前は政策的に大学間に差が出ないようにされていましたが、連邦政府は今や競争性を導入しようとしています。グローバル化が進む中、大学にも国際競争力が求められている世の中の状況を考えれば、自然な流れでしょう。このため、今は大学間に明らかな格差が出てきています。州が科学技術や研究の振興に力を入れており(ドイツの大学は基本的に州立なので、この点は重要です!)、かつ大学自身が理工系に力を入れているような場合であれば、良い研究環境が整えられている可能性は大でしょう。

 ちなみに、ドイツの大学では、研究資金は基本的に外部のグラントに頼っているわけですが、大学から自動的に割り振られる研究費も若干あります(日本でいう校費のようなものでしょうか)。最近私が聞いたケースでは、この研究費の額がとある大学間で4倍の開きがあるそうです。

 ところで、ドイツで研究するとなると、「ドイツ語」が一つのネックとなります。この点、マックスプランク協会傘下の研究所においては、まず問題はないでしょう。殆どの研究室で英語で議論が行われています。これは、常勤研究者の22%、若手及び客員研究者の49%が海外から来ている(データは何れも2001年度時点)ということにもよるのだと思いますが、マックスプランク協会本部も、英語環境による組織運営を奨励しています。いくつかの研究所では、研究所内の公用語を英語と定め、秘書や研究補助員に英語の研修を受けさせていたりします。

 しかしながら、ドイツ人は意外に英語を使えないということも事実であり、マックスプランク研究所でも、テクニシャンや研究補助者が英語を出来ないというケースが多くあります。大学に至ってはなおさらで、研究室のボスや他の研究者との個別の議論はともかく、研究室内での議論の多くはドイツ語で行われています。大学でも、意識的に英語を導入し、英語で研究室運営をやっているボスも少なからずは存在するのですが、学生やスタッフの殆どがドイツ人であることを考えると仕方のない面もあります。

 しかしまあ、ドイツに来たんだから少しくらいドイツ語を使ってみるのも楽しい経験でしょう。わたしもドイツ語が苦手で、基本的に英語で仕事をしているのですが、相手が英語をしゃべれない場合は、英語、変なドイツ語、日本語!を駆使し、それでも駄目な場合は絵を描いてコミュニケーションを図りますが、まあ、何とかなるものです。

 研究環境というものは、研究室のボスにより大きく左右されるため、日本がよい、ドイツがよい、アメリカがよい等と一概には言えませんが、少なくとも非常に質の高い研究基盤があり、治安が良く生活しやすいドイツは、検討に値する研究実施場所だと思います。

(2003年7月、井上諭一 記)