●基本政策等
○CDU・SPD連立協定(2005年11月)
−2010年までに独の研究開発投資を対GDP比にして少なくとも3%にする
−推進する個別分野については、
・バイオ及び遺伝子技術、IT技術、化学、医薬、エネルギー、交通技術、ナノテク及びマイクロシステム工学、光学技術、エネルギー技術、環境技術、 宇宙開発、環境保護技術、地球観測技術、再生可能性エネルギー技術、安全 技術、核融合技術を列挙
−クラスター政策に引き続き継続的に取り組む(特に旧東独地域)
○CDU・SPD連立与党政策集中討議(2007年8月)
・(GDP比)3%の目標を達成するために、国と州と経済界を合わせた研究開発投資を2005年に5570万ユーロであったものを2010年に7900万ユーロに伸ばす。2008年度予算は研究開発投資の(GDP比) 2.7%を達成するのに必要な国の出資を確保している。2011年までに追加的に90万ユーロが投入される。また、国のイニシアティブにより、民間の研究開発投資は8億ユーロとする。
・ヨーロッパにおいてトップクラスである5つの研究分野がある。@気候研究計画、A痴呆症(パーキンソン病、アルツハイマー病等)に取り組む国立センターの設立、Bトップクラスの研究を生み出すことに主導的な役割を果たすこと、C新しいインターネットベースの科学インフラであるテセウスプログラム、Dエネルギー供給のデジタルリンク(E-Energy)である。
・イノベーション力を強化する。新しいイニシアティブ”Dialog
Innovation Ost” 雇用のための研究の発展のためのイノベーション計画を進める。経済界とともに大学以外の研究機関と東ドイツの大学の親密な協力を進める。技術的観点からの探求を特別に推進する。公共の利益になる外部の産業界の研究施設を補助することを検討する。
・エキスパートやスペシャリストや若手にとって魅力的な環境を提供するため、科学自由法(Wissenschaftsfreiheitsgesetz)の枠組み作りにとりくむ。(研究施設や大学等の自由度を増すもの。財政法、建築法規、年金の利用権、副業許可、国内と国際の関係拡大が関係する。)
○具体的な主要施策
(1)クラスター創出プログラム
ドイツ科学技術政策は90年代に、従来の特定技術分野への投資から、組織間ネットワーク構築へとシフトし始める。
特に、地域イノベーション政策の一環として、ドイツの各地域が有する技術的ポテンシャルを有機的に結びつけることを目的としてバイオ分野に焦点を絞ったクラスター創出プログラム、ビオレギオ(BioRegio、96〜2000年)が実施され、国内バイオ関連企業数の急増という大成功を収め、バイオ分野のみならず、先端分野の地域イノベーションモデルとなった。ビオレギオの後継プログラムとして、バイオ中小企業のハイリスク研究開発を支援するBioChance、バイオ分野における若手研究者への支援を行うBioFuture、ヘルスケア以外の分野に特化した支援を行うBioProfileがある。
現在、旧東独における地域クラスター創出プログラム、イノレギオ(InnoRegio)が推進されている。
(2)EXIST
クラスター創出プログラム方式をモデルとして、地域イノベーションによる起業支援プログラム。選定された5地域に対して年間20億円、96〜2004年の6年間にわたって支援。02年からは、さらに対象を拡大して類似プロジェクトであるEXIST-Transfer,
EXIST-Partner が開始されている。
(3)コンピーテンツ・ネッツ(Kompetentznetze.de)
コンピーテンツ・ネッツは、クラスター創出プログラムを通じて形成されたクラスターの質を向上・発展させるために、クラスターをネットワーク化するBMBFの取り組み。このネットワーク化により、各クラスターにおける問題点や経験を情報交換し、いわゆる「ベスト・プラクティス」を共有し、外部からの投資の呼び込みを行うなど新しい価値を見い出すことを目的としている。33地域、18分野にわたって115ネットワークが登録されている(05年時点)。各ネットワークにはネットワーク・コーディネータが置かれ、BMBFが招集する諮問委員会が各ネットワークを定期的に評価する。
3.最近のトピック
(1)研究助成システム改革及びトップ大学育成
2005年6月、研究助成システム改革とトップ大学育成に関して、連邦政府と各州との間で合意(2006年〜2011年までを実施期間とし、予算の75%を連邦政府が25%を州政府が負担)が成立。
(イ)エクセレンス・イニシアチブ
・40の優れた大学院を支援(年間各100万ユーロ)
・30の優れた研究クラスターを支援(年間各650万ユーロ)
・10の優れた先端研究構想を持つトップ大学を支援(年間各210 0万ユーロ)
(ロ)研究・イノベーション協定
・ヘルムホルツ協会、マックスプランク協会、フラウンホーファー協会、ラ イプニッツ協会及びドイツ研究協会への予算を2010年まで毎年最低3%の増加を保証
(2)「ハイテク戦略」
「アイデアが爆発する」というスローガンのもと、ドイツが欧州及び国際マーケットにおいてトップの地位を得ることを目的とし、BMBFのイニシアティブのもと、連邦各省・部局の枠を超えて2006年8月にとりまとめられた。
科学界と経済界の緊密な協力、企業によるイノベーションへのコミットメント向上、ハイテクの積極的普及、研究開発の国際化、そして人材育成支援、の5つの横断的領域から構成される。
施策の具体例として「研究プレミアム」、「トップクラスターコンペティション」などが挙げられている。
また、17のイノベーション分野(ライフサイエンス・医薬、セキュリティ、植物、エネルギー、環境、情報通信、運輸・交通、航空、宇宙利用、海洋開発、サービス、ナノテク、バイオ、マイクロシステム、光学、材料、生産システム)を定義。
本戦略に基づき、2009年までに連邦政府として総額146億ユーロを投資し、研究開発費の対GDP比3%を達成するとともに、このハイテク戦略の着実な実行により、数年間で約150万の新規雇用を期待するとしている。
(3)研究プレミアム
産学連携を促進するため、公的研究機関が、従業員数が最大1000人までの企業から受託する研究開発委託事業に対して、連邦政府が助成するプログラム。助成金額は受託金額の25%、事業当たり下限2500ユーロ上限10万ユーロ。09年末までの期限付きで、計約1億ユーロが充てられる予定。
(4)トップクラスターコンペティション(Spitzencluster-Wettberb)
ハイテク戦略の中で最も重要と位置づけられるプロジェクトであり、これまでのクラスターの強みを生かす戦略とまだ開発されていない潜在能力に着目するもの。総額で6億ユーロ投資する予定。選考は1年から1年半の間隔で3回に渡り行われ、1回の選定あたり、最大5つの優秀なクラスターを選び、最大5年間で総額2億ユーロが手当てされる。
|