ドイツにおける防疫措置(新たな措置に関する連邦と州の合意)

令和2年9月29日
 9月29日,メルケル・ドイツ首相は,各州首相とテレビ会議を行い,最近のドイツにおける新型コロナウイルス感染状況を踏まえ,秋冬を控えて,共に制御不能なアウトブレークを防ぐ必要があるとして,新たな措置を発表したところ,連邦と州の合意事項の主要なポイントは以下のとおりです。
 
【ポイント】
● レストラン等で記入を指示される顧客リストに誤った個人情報を記入した際には,最低50ユーロの反則金が科される。
● 感染者数が増加することになる冬季において,広く通用している「AHA」スローガン(1.5メートルの対人間隔確保(Abstand halten),保健衛生措置(Hygienemassnahmen)及び日常マスクの着用(Alltagsmasken tragen))に加え,コロナ警告アプリの利用(Corona-Warn-App nutzen)の「C」及び換気(Lueften)の「L」が追加されなければならない。
● 検査戦略及び隔離措置が改定されるまでは,現行の規則が維持される。連邦及び各州首相は市民に対し,リスク地域への旅行を慎むよう呼びかける。
● 保健システムに過剰な負担がかかるのを防ぐため,発熱外来,重点診療時間及び重点診療の設置可能性が利用される。
● 一市郡あたり過去7日間の累計で10万人あたり35人以上の新規感染者が発生した場合,公共及び貸出スペースでの私的な祝い事における参加者数の上限は50人に設定され,私的な場所では,参加者が25人を超える祝い事を開催しないよう強く推奨する。10万人あたり50人以上の新規感染者が発生した場合,公共及び貸出スペースでの上限は25人に設定され,私的な場所では10人を超える祝い事を開催しないよう強く推奨する。
 
【本文】
 ドイツはこれまで,各州及び連邦による緊密かつ建設的な協力のおかげでコロナ危機を上手く乗り越えてきたが,残念ながら7月末以来,1日あたりの新規感染者数が再び増加している。過去数週間は休暇中の旅行が増加の原因だったが,最近はドイツ国内発の感染拡大が続いている。秋季・冬季においては,気温の低下とともに室内に滞在することが多くなり,インフルエンザの季節でもあるため,特に注意する必要がある。これは今,地域的な感染への決定的な原因であることが示された,余暇の利用及び私的な祝い事に当てはまる。この関連で,連邦及び各州首相は市民に対し,バーやレストラン,イベントの参加に際し,正確かつ完全な個人情報及び連絡先を提出し,感染の迅速な発見及び抑え込みに協力するよう呼びかける。また,優先目標は,学校及び託児施設の通常運営の続行及び経済活動の始動である。
 それ故,連邦と州は以下の点を決定する。
 
A 対人間隔保持及び保健衛生措置に一貫して注意を払う
 
1 連邦と州は市民に対し,対人間隔の保持及び保健衛生措置に引き続き一貫して注意を払い,正確なデータの提出により接触者の追跡が可能にするよう呼びかける。特に特定の公的範囲におけるマスク着用義務は拘束力を有し,公安当局によって一貫して検査され,処罰される。これは,レストラン等で記入を指示される顧客リストに誤った個人情報を記入した際にも実施され,最低50ユーロの反則金が科される。
 
2 感染者数が増加することになる冬季において,広く通用している「AHA」スローガン(1.5メートルの対人間隔確保(Abstand halten),保健衛生措置(Hygienemassnahmen)及び日常マスクの着用(Alltagsmasken tragen))に加え,コロナ警告アプリの利用(Corona-Warn-App nutzen)の「C」及び換気(Lueften)の「L」が追加されなければならない。全ての私的及び公的空間において定期的に換気を行うことで,感染の危険性が大幅に減少する。窓や扉の開閉による換気が制限されている場所では,空調設備が通気を高め,空気中のエアロゾル量を減少させるのに役立つ。
 現在,ドイツ全土で学校及び託児施設の運営が行われており,局所的に感染者数の増加に直面しているものの,これまで上手く機能している。感染者数が増加している地域においては,出席形式で授業を維持するため,場合によっては授業中のマスク着用が役立つ可能性がある。冬季においては,定期的な換気がウイルス濃度の低下をもたらし,それによって感染リスクが低下する。出席形式での授業を維持するために,保健衛生措置及び教育相会議によって作成された学校運営のための規則に引き続き注意し,要すれば状況に応じて適合させる必要がある。感染者が発生した場合でも,クラスターを隔離することで足り,その他の学校運営は維持できるようになる。
 
B 検査及び追跡レジーム
 
3 検査戦略及び隔離措置が改定されるまでは,現行の規則が維持される。新たな検査戦略には,高速検査(Schnelltest)に関する規則が含まれる。
 
4 入国届が効果的に保健当局に送られ,隔離義務の効果的な実施が保証される条件が整った場合,8月27日に決定された新たな入国後の隔離ルールが可能な限り迅速に実施されなければならない。このような背景から,連邦と州は,昨日から開始された連邦警察による所在追跡票(Aussteigekarte)及びドイツポストとの協力による迅速な処理を歓迎する。
 連邦及び各州首相は市民に対し,リスク地域への旅行を慎むよう呼びかける。
 
5 新型コロナウイルスの感染者数増加と秋季・冬季において予想されるインフルエンザの流行の一致は,保健システムに対して特別な挑戦をもたらす。保健システムに過剰な負担がかかるのを防ぐため,発熱外来,重点診療時間及び重点診療の設置可能性が利用される。加えて,入院及び特に危険な二重感染の可能性を防ぐため,リスクグループはあらかじめインフルエンザワクチンを接種するべきである。
 
6 感染者の追跡及びそれに基づく感染の抑え込みは,引き続き最優先事項である。このための基本的要件は強い公的保健サービスであり,これを引き続き強化するため,連邦と州は公的保健サービスのための協定を締結する。同協定の中心は,2026年までに連邦から拠出される40億ユーロの助成金である。この助成金により,各州において,総数5千の新たなポストの創出,保健局におけるデジタル化の促進及び職業選択における公的保健サービスの魅力の増大が実施される見込みである。
 
7 完全な接触者追跡は,感染拡大を阻止するための中心的な要素であるため,保健局がキャパシティ不足を理由に完全に接触者を追跡できなくなりそうな場合,又は実際にできない場合には,迅速に州の監督当局及びロベルト・コッホ研究所に申し出を行うことが重要である。これにより,連邦及び州による支援が確保される。
 
C ホットスポット戦略の更なる向上
 
8 ここ数週間で,家族や友人間の祝い事で感染が拡大しうることが示された。私的な祝い事の実施がそもそも不可欠か,またその場合,どのような,そしてどの程度の規模の私的な祝い事が必要であり,また,感染拡大状況に鑑みても許容されるか,個別のケース毎に検討することを市民に求める。これらの祝い事は屋外で開催されることが望ましい。屋内では常に十分な換気に留意せねばならない。したがって,感染が拡大した場合は,私的な祝い事及びイベントの開催制限や,マスク着用義務の厳格化,及びアルコールの提供の時間制限等の措置を講じられなければならない。
 一市郡あたり過去7日間の累計で10万人あたり35人以上の新規感染者が発生した場合,各州政府は私的な祝い事における参加者数の上限を設ける。公共及び貸出スペースでの祝い事では,50人の上限が設定され,私的な場所では,参加者が25人を超える祝い事を開催しないよう強く推奨する。10万人あたり50人以上の新規感染者が発生した場合,更なる対策が講じられる。公共及び貸出スペースでの上限は25人に設定され,私的な場所では10人を超える祝い事を開催しないよう強く推奨する。保健局によって承認された衛生計画をもって登録された祝い事は同措置の例外と認められうる。州及び自治体は,同措置で定められているものより厳しい基準を定める裁量を有する。
 さらに,10万人あたり50人の値に達することを防ぐために,各州は早期警戒システムを導入し,各州保健局はその旨ロベルト・コッホ研究所に通報する。
 
9 秋季・冬季においては呼吸器疾患の増加が予想され,集中治療の需要が高まる見通しであることから,各州は,4月30日の連邦及び各州首相決定に基づき,集中治療キャパシティの地域的管理により将来予測に基づく計画を立てる。
 
【参考】
○ 連邦と州の合意事項に関する連邦政府プレスリリース
 https://www.bundesregierung.de/breg-de/aktuelles/mpk-corona-1792242