大使館案内

令和5年9月6日

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柳秀直大使


 ドイツ在住の皆様

 今年はようやくコロナ後の正常な生活が戻ってきたと言えると思いますが、皆様如何お過ごしでしょうか。私も三度目の冬にして初めて新年賀詞交換会、天皇誕生日レセプションを開催することができ、また、シュタインマイヤー大統領も3年ぶりに外交団のための新年レセプションを行うなど、ようやく通常の活動ができるようになりました。ここでは年初から8月までの日独間の動きを振り返ってみたいと思います。


1.要人往来
(1) 首相・閣僚レベル
 なんと言っても3月18日に日本にとっては初めてとなる日独政府間協議が行われ、ショルツ首相(社民党)と6人の閣僚(ハーベック経済・気候保護相、ベアボック外相(いずれも緑の党)、リントナー財務相、ヴィッシング・デジタル交通相(いずれも自由民主党(FDP))、フェーザー内相、ピストリウス国防相(いずれも社民党))が訪日し、岸田総理と日本の六閣僚(林外相、鈴木財務相、西村経産相、高市経済安保担当相、松本総務相、浜田防衛相)との間で、経済安全保障問題を中心に議論が行われたことが特筆されます。また、ドイツの国防相が16年ぶりに訪日されたこともあり、浜田防衛相との間で、安保・防衛面での協力の強化も議論されました。ドイツは仏英伊中印等、多くの主要国との間で首相と複数の閣僚が参加する政府間協議を行ってきましたが、日本との間ではこれまで行われたことはありませんでした。連立与党は既に連立協定の中で日本との政府間協議の開催を目指すことを明記していましたが、実際に開催されたことで、ロシアのウクライナ侵攻以降の日独関係の緊密化を象徴する出来事となりました。
 その他の要人往来として、日本からは、1月に河野デジタル大臣、野村農水大臣が、また、5月に齋藤法相がベルリンを訪問されました。独側からも日本がG7議長国であることもあって後述の通り、多くの閣僚が訪日したほか、連邦議会からは外務、労働・社会(いずれも2月)、独日議連(3月)、予算・決算(4月)、スポーツ(7月)と多くの委員会と議連が訪日しました。
(2) 防衛関係
 また、防衛分野では前述の国防相会談で安保防衛分野の関係強化の方針が確認される中、3月上旬には山崎統幕長(当時)が訪独し、ツォルン連邦軍総監(当時)と会談する一方で、独側からはゲアバルツ空軍総監(3月)、マイス陸軍総監(7月)が訪日し、それぞれ井筒空幕長(当時)、森下陸幕長と意見交換を行い、我が国として、ドイツ連邦軍のインド太平洋への関与の継続・拡大を歓迎しました。また、6月には内倉空幕長が、独が中心となって行ったAir Defender 2023という多国間空軍演習を参観するために訪独しました。
(3) 自治体関係
 コロナの規制が開けて今年は日本からも自治体関係者の訪独が続いています。4月後半、内堀福島県知事がハンブルク、デュッセルドルフ、ベルリンを訪問され、ベルリンでは「福島から感謝する」レセプションを共催させて頂き、福島の郷土料理等をふるまいました。また、6月には宮坂東京都副知事がベルリンを、また、7月には山中横浜市長がベルリン、フランクフルト、ハンブルクを訪問され、石森八王子市長は姉妹都市であるヴリーツェン市を訪問されました。
 これに対しドイツからは6月にヴュスト・ノルトライン=ヴェストファーレン州首相がパートナー関係にある福島、東京、大阪を、ライター・ミュンヘン市長が姉妹都市である札幌を訪問されています。

2.G7議長国
 ロシアによるウクライナ侵攻が継続する中、今年は日本がG7議長国ということで、まずは2月のミュンヘン安保会議の機会を利用して、G7外相会合を林外相がミュンヘンを訪れ議長として主催され、G7として引き続きウクライナを支援していくことを確認しました。
 また、日本議長国下で、日本で開催された首脳・閣僚会議に広島サミットにショルツ首相が訪日されたのをはじめ、ベアボック外相(軽井沢)、レムケ環境相(札幌)、エズデミール農業相(宮崎)、リントナー財務相(新潟)、ヴィッシング・デジタル交通相(高崎)、シュタルク=ヴァッツィンガー教育研究相(仙台の研究大臣会合と富山・金沢の教育大臣会合)、ラウターバッハ保健相(長崎)、パウス家族高齢者等担当相(日光)、ガイヴィッツ建設相(高松)、ブッシュマン司法相(東京)等、多くの閣僚が訪日されました。
 特に、広島サミットでは、米英仏という核保有国首脳を含む参加国首脳が原爆資料館を訪問したほか、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が発出されました。また、「経済強靱性及び経済安全保障に関するG7首脳声明」、ゼレンスキー・ウクライナ大統領が出席しての「ウクライナに関するG7首脳声明」等のG7の声明が発出されたほか、いわゆるグローバル・サウスのアウトリーチ国の参加も得て、「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」が発出されたことは特筆に値すると思います。

3.内政関連
(1) ベルリン州・区議会の再選挙
 2021年9月の選挙には不備があったとしてベルリンにおける選挙は再選挙が行われることとなり、2月12日に実施され、CDUが28.2%を獲得して第一党となり、ギファイ前州首相(社民党)にとっては緑の党と左派党との薄氷の過半数で連立を継続する選択肢もありましたが、CDUと連立を組むという難しい決断を行い、CDUと社民党の連立が成立しました。
 私は8月1日にヴェーグナー州首相を表敬する機会を得ましたが、来年の東京都との姉妹都市30周年の機会に訪日する予定であることを述べるなど、東京都、日本との関係強化に前向きな姿勢を示されました。
(2) その他
 2月にクレッチュマン・バーデン=ヴュルテンベルク(BW)州首相を着任表敬して、日BW州、日独関係について、また、ロシアのウクライナ侵攻後の両国の国防、エネルギー政策について、お話をさせて頂きました。また、3月には最大野党キリスト教民主同盟のメルツ党首を表敬し、日独関係について話すと共に、独内政についての見方を伺いました。

4.経済
 4月に不二製油が投資したエンドウ豆由来の機能性食品素材を生産するフジ・ブランデンブルク工場の開所式が行われ、ブランデンブルク州経済省次官と共に、私も出席しお祝いの言葉を述べさせて頂きました。
 コロナ後に再開した見本市については、2月にニュルンベルクの有機食品見本市(ビオファッハ)、4月末にハノーファーの見本市で、水素インフラや燃料電池の部品や試験装置、サイバーセキュリティ用のソフトウェア等を扱う日本企業のブースを視察しました。
 5月末にはナーゲル連邦銀行総裁を連銀のベルリン事務所に表敬し、ドイツの経済・金融事情に関する見方を伺いました。
 公邸での行事としては、5月にベルリンに駐在する農業アタッシェによる農務官の会を公邸で開催し、エズデミール農業相にお越し頂きました。6月にはドイツ国際自動車製造者協会(VDIK)とレセプションを共催し、ルクジッチ連邦デジタル交通省政務次官にお越し頂くと共に、日系自動車メーカー、自動車関連企業に出展して頂きました。
 また、2025年4月13日には大阪・関西万博の開幕する予定ですが、4月に経済・気候保護省で行われたドイツ・パビリオンのコンセプト発表会に出席し、同省ケルナー政務次官とともに御挨拶させていただきました。

5.スポーツ
(1)スペシャル・オリンピック
 6月17日から25日までベルリンで、知的障害を持つ方々のスペシャル・オリンピックが開催され、開会式に出席すると共に、サッカーと競泳を観戦しました。非常に家族的なこの大会の雰囲気はスペシャル・オリンピックならではのものであり、他の選手に遅れて泳ぐ選手にも温かい拍手が惜しみなく送られるなど、順位がすべてというよりも、競技に参加している選手への共感、後押しが強く感じられました。
(2) サッカー
 3月24日にU21の日独親善試合を観戦し、9月9日にはフル代表の親善試合が行われます。また、今年の夏はバイエルン・ミュンヘンが16年ぶりに日本に遠征し、マンチェスター・シティと川崎フロンターレと親善試合を行いました。
 ブンデスリーガから遠藤航選手がリバプールに、鎌田選手がローマのラツィオに、また、吉田麻也選手が米国に移籍したのは残念ですが、二部では新たにカタールW杯における日本代表に選ばれていた町野選手がホルスタイン・キールに移籍し、2戦目で決勝ゴール、4戦目でダメ押しの二点目を上げるなど大活躍しており、また、ニュルンベルクに奥抜選手、林選手が移籍するなど、日本人選手が増えています。町野選手のキール、伊藤達哉選手のいるマグデブルク、田中碧選手などがいるデュッセルドルフなどが好調で、日本人のプレーするチームが一部に上がって欲しいと願っています。
 女子サッカーはW杯で、ドイツ代表が残念な結果に終わったのに対し、なでしこはスペイン、ノルウェーを倒したまでは絶好調でしたが、準々決勝でスウェーデンに屈したのは本当に残念でした。熊谷選手がローマに移籍したのも残念ですが、なでしこの世界ランキングは8位に上昇しており、今後が楽しみです。
(3)バスケット
 8月25日から、男子バスケットのW杯が日本、フィリピン、インドネシアの共催で行われていますが、日本は沖縄の初戦で、残念ながら地力に勝るドイツに敗れてしまいました。ドイツは豪州、フィンランドに勝ち3戦全勝で二次リーグに進み、ジョージア、スロベニア、ラトビアを下して準決勝に進出したところ、さらなる躍進に期待しています。なお、日本もフィンランドに逆転勝ちし、計3勝をあげ、パリ五輪へのアジア代表枠での出場権を獲得しました。
(4) 世界水泳
 7月に福岡で行われた世界水泳では男女ともオープンウォータースイミングでドイツのフロリアン・ウェルブロック、レオニー・ベックの両選手が10km、5kmの二種目で金メダルを取り、世界を驚かせました。
(5)バレーボール
 1月に日本代表選手にも選ばれている築城智選手がリベロとして活躍しているBerlin Recycling Valleysの試合を観戦させて頂き、築城選手のプレーと熱狂的なファンの応援を身近で見ることができました。

6.文化交流
(1)映画
 2月に開催されるベルリナーレは、コロナ後は昨年から再開していますが、今年はほぼ正常化し、日本からは「#マンホール」と「すずめの戸締まり」等が出展され、「#マンホール」の熊切和嘉監督、主演の中島裕翔氏、「すずめの戸締まり」の新海誠監督が訪問されました。
 また、日独の協力例としては、ヴィム・ヴェンダース氏が監督した「PERFECT DAYS」で役所広司氏がカンヌ映画祭の主演男優賞をとるという快挙を成し遂げました。
(2)日本語関連
 5月には日本語スピーチ・コンテスト表彰式と2021年の日独友好160周年にちなんだ独日友好賞表彰式を開催しました。また、30年来日本語を教えているベルリンのグスタフ・ハイネマン学校を訪問しました。小学校5,6年生で日本語を第二外国語として必修科目としている数少ない学校で、12年生まで選択できるとのことです。
(3) 独外務省オープンデー
 8月19日、20日に開催された独外務省オープンデーに、今年はG7議長国の日本とG20議長国のインドがパートナー国として参加しました。当館や当地日本関連団体にとって、食や音楽をはじめとする日本の文化や観光をドイツの皆さんに紹介する良い機会となり、ベアボック外相にも日本のスタンドを訪れて頂きました。

7.科学技術関係
 ライプニッツ協会のブロックマイヤー会長、ドイツ科学アカデミー・レオポルディーナのハウグ会長、ドイツ工学アカデミーのヴェルナー会長を表敬し、日独間の科学技術分野の交流についてお話をさせて頂きました。
 また、6月にはシュタインマイヤー大統領がフンボルト財団による稲垣史生・海洋研究開発機構(JAMSTEC)上席研究員・東北大学教授へのシーボルト賞の授賞式を大統領官邸で主催して頂きました。
 ドイツで活躍される日本人研究者の方々との関係では、2月末には60名以上の研究者の方にベルリンにお集まり頂き、交流会を開催して小松英一郎マックス・プランク宇宙物理学研究所長より講演を行って頂きました。

8.領事関係
 ベルリン日本人国際学校が4月に30年間慣れ親しんだヴァンゼーの地からランクヴィッツに引っ越しました。数年前から移転計画が進められる中、移転先の決定に際してはコロナ禍で困難を極めましたが、竹谷日本人国際学校理事長をはじめとする関係者のご尽力もあり、ようやく移転が実現し、喜んでいます。また、5月末から6月にかけてベルリン日本語補習授業校と、ベルリン中央学園補習授業校というベルリンの二つの補習校を見学させて頂きました。両校ともコロナ禍の厳しい時期を乗り越え、通常の授業で子供たちが元気に国語を学んでいるところを参観させて頂きました。
令和 5年(2023年)9月    
   在ドイツ日本国大使館     
特命全権大使  柳  秀直  



 

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